近年若者を中心に爆発的な人気を集めているのが「eスポーツ」と呼ばれるコンテンツです。 eスポーツとはエレクトロニック・スポーツ(Electronic Sports)の略で、ビデオゲームやコンピューターゲームの対戦をスポーツとして捉える際の名称のことを指します。
海外ではすでにサッカーや野球といった従来のスポーツと同様に捉えられており、プロeスポーツ選手は子どもたちの憧れとなっています。 世界に比べて少々遅れを取っていると言われている日本でもその人気は確実に高まってきており、eスポーツリーグブランド「X-MOMENT」の発足やeスポーツタイトルによるプロリーグの開幕など、徐々にeスポーツが受け入れられる土壌が整いつつあります。
1つのエンターテイメントとして巨大な市場を築きつつあるeスポーツですが、その市場規模は現在そして今後とどうなっていくのでしょうか? この記事では、eスポーツの市場規模について世界と日本でそれぞれわかりやすく解説します。
世界のeスポーツ市場規模
eスポーツの市場規模は競技人口とそれに伴うファンの増加により急速に拡大を続けています。 市場拡大が続く大きな要因の1つに「場所を選ばないスポーツである」ことが挙げられ、新型コロナウィルスの影響で世界的に多くのスポーツイベントが中止・延期される中でも自宅で楽しめるスポーツとして変わらずファンを獲得し続けることができました。
株式会社KADOKAWA Game Linkageの「グローバルeスポーツマーケットレポート2020」によると、2020年の世界のeスポーツ市場規模は約9億7390万ドルとなっています。 この数値は前年と比較して約1.7%の増加となっており、この勢いは留まることなく2023年には市場規模は15億9820万ドルに達すると予想されています。
国別の市場規模では、アメリカが37%、中国が15%。韓国が7%と3カ国だけで世界全体の半分以上を占めており、今後はしばらくこの3カ国がeスポーツ市場をリードしていくと予想されています。 一方日本の世界シェアは0.5%程度となっており、まだまだ発展途上の段階であるといえます。
日本のeスポーツ市場規模
海外では2000代前半にはeスポーツという単語が使われていましたが、日本ではeスポーツ元年と呼ばれ「eスポーツ」が流行語大賞にもノミネートされた2018年以降から徐々に認知されるようになりました。そういった背景もあり、日本のeスポーツはここ数年で急速な成長を遂げています。 ゲーム総合情報メディア「ファミ通」は、2020年の国内eスポーツ市場規模は66.8億円、今後の成長予測では2024年に180億円を超えると発表しました。 前年比では9%増の数字となっており、海外と比較しても日本eスポーツ市場の成長速度が非常に早いことが伺えます。
こうした日本eスポーツ市場の急速な拡大を受けて、国内の経済効果への期待も高まっています。 経済産業省は日本eスポーツ連合(JeSU)への委託事業である「令和元年度新コンテンツ創造環境整備事業(eスポーツに係る市場規模等調査分析事業)」において、「eスポーツを活性化させるための方策に関する検討会」を開催、報告書を公表しました。
この検討会では、
- 周辺市場・産業への経済効果を含めた国内のeスポーツの市場規模の試算、海外主要国のeスポーツの発展の経緯等に関する調査・分析を行うこと
- eスポーツの社会的意義について国内の各種取組の現状、課題、今後の展望等を踏まえ整理・検討を行い、一定の示唆を得ることにより、eスポーツの健全な発展に資すること
の2つをテーマに議論され、IPの利用・許諾に関するガイドラインの整備や、eスポーツの教育的価値の検証などを通じてeスポーツの振興に積極的に取り組んでいく方針が示されました。
eスポーツ市場規模拡大の要因は大手企業の参入
ファミ通の発表によると、2020年の国内eスポーツ市場の収益の約7割が企業スポンサーによるものとなっています。 これは、eスポーツの市場規模拡大に大手企業によるeスポーツ業界への参入が深く関係していることを意味します。
企業がeスポーツ市場に参入する理由
多くの企業がeスポーツ市場へスポンサーとして参入するのには次のような理由(メリット)があります。
若年層への広告・宣伝効果
eスポーツは特に若年層に好まれる傾向が高く、ファミ通が行った実態調査では、eスポーツの試合または動画の視聴経験者382.6万人の内20〜30代が半数以上を占めているとの結果が出ました。そのため、eスポーツ関連のイベントや大会のスポンサーは、自社の製品やサービスを若年層にアピールできる絶好の機会となるのです。
比較的参入が容易
日本のeスポーツ業界は急激な盛り上がりを見せているとはいえ、制度などを含めまだまだ未発展の領域で、現状では多くのチームや大会が常にスポンサーを募集しています。 そのためeスポーツ業界に興味を持っている企業は、スポンサーという形で比較的簡単に関わりを持つことができます。
今後の発展が見込まれている
上記で解説した通り、eスポーツ業界は日本を含め世界中で今後さらなる発展が予想されています。また、オンラインで完結が可能なeスポーツという競技の特性上、新型コロナウィルスなどの不測の事態への対応も比較的容易です。企業がスポンサー契約に求める長期的な利益や広告効果という観点から見ても、eスポーツ業界への参入は大きなメリットがあるといえるでしょう。
集客効果・拡散効果が高い
eスポーツは今後も市場がどんどん拡大していくと予想されている分野のため、市場の拡大とともに新しい客層へとアプローチできる可能性が非常に高いです。また、eスポーツ関連のイベントはオフラインよりもオンラインの方が主流となっているため、会場の収容人数といった制限などがなく、一度のライブ配信で何十万人もの視聴者を集めることができます。 SNSとの相性もいいので、人気のチームや大会のスポンサーとなればさらに拡散されることも期待できます。
参考:ファミ通
eスポーツ市場への投資方法は主に4つ
次に、企業がスポンサーとなってeスポーツ市場へと投資する方法を4つ紹介します。
チームへの投資
1つめは、プロのeスポーツチームと直接スポンサー契約を結ぶ方法です。チームの活動資金や練習環境、プレイに使用するデバイスなどを提供します。 サッカーや野球と同じように、試合で使用するユニフォームに自社の広告を入れることができるので高い宣伝効果が期待できます。人気の高いプレイヤーが使用しているマウスやヘッドセットなどのデバイスはファンへの購買を促進できるので、チームのスポンサーには周辺機器などを扱う企業が多いです。
大会への投資
2つめは、全国各地で開催されている様々なタイトルのeスポーツ大会へ協賛する方法です。大会の運営資金や入賞者への賞金などを提供します。 観客の数次第では高い広告効果が見込めるため、人気のある大規模な大会ではいくつもの企業が協賛となっています。大会ごとに投資が可能なため参入も撤退もしやすく、企業がeスポーツ市場に参入する方法としては最もポピュラーなものとなっています。
設備への投資
3つめは、大会の試合会場などのeスポーツ関連施設へと投資する方法です。チームや大会への投資より宣伝効果の面では劣りますが、会場の机や椅子といった設備を自社からの提供品で揃えることができるといったメリットがあります。
海外のチーム・大会への投資
最後は、海外のeスポーツチームや大会などへ投資する方法です。 日本よりもeスポーツが盛んな海外では、その分高い宣伝効果が期待できます。海外展開を考えている企業や、グローバルな事業を展開している企業などには最も有効な投資方法です。
eスポーツのスポンサー企業例
ここからは、実際にeスポーツ市場へスポンサーとして参入している企業をいくつか紹介します。
コカ・コーラ
コカ・コーラは、近未来が舞台の人気FPS「オーバーウォッチ」のオフィシャルスポンサーを努めています。またそれだけではなく、日本のプロeスポーツチーム「Sengoku Gaming」のスポンサーやeスポーツの甲子園とも呼ばれている夏の高校生限定eスポーツ大会「STAGE:0 eSPORTS High-School Championship 2021」のトップスポンサーなど、様々な形でeスポーツ市場へ参入しています。なお、「STAGE:0 eSPORTS High-School Championship 2021」ではコカ・コーラだけでなく、ロート製薬や日清食品ホールディングスなどの有名企業もスポンサーとして参加しています。
ビームス
アパレルメーカーのビームスも、競技者の中心である若年層と接し意識や動向を知ることが若者に選ばれる企業であるための手段であるとして、積極的にeスポーツ業界へと出資している企業の1つです。2018年より日本eスポーツ連合(JeSU)のオフィシャルスポンサーとして日本代表選手にユニフォームを提供しているほか、2020年にはアジア最大級のeスポーツイベント「RAGE ASIA 2020」の公式Tシャツをデザインしました。
おやつカンパニー
お菓子のベビースターで知られるおやつカンパニーは、名古屋に拠点を置くプロeスポーツチーム「名古屋OJA」のシャドウバース部門のオフィシャルパートナーを2018年から努めています。またそれだけではなく、合同会社DMM GAMESが主催する人気バトロワ「PUBG」の大会である「PSJ Winter Invitational 2019」や「PUBG JAPAN SERIES season6」への協賛、プロeスポーツ選手監修のゼリー飲料の発売など多岐にわたってeスポーツ業界の発展に貢献しています。
モンスターエナジー
アメリカでシェアNo.1を獲得しているエナジードリンクであるモンスターエナジーは、テレビCMや雑誌といったいわゆるマス広告を一切行わず、スポンサーとなっているeスポーツアスリートやチームの活躍によって自社をPRしています。また、人気のeスポーツタイトルとのコラボを数多く実施しているのもモンスターエナジーの特徴です。 これまでに「レインボーシックスシージ」や「バトルフィールド」、「World of Tanks」といった人気eスポーツタイトルとコラボ企画を行っており、2021年10月からは日本でも数多くのファンを抱えるバトルロイヤルFPS「Apex Legends」とのコラボを発表し話題となりました。
まとめ
この記事では、eスポーツの市場規模について解説しました。 海外ではすでに巨大な市場を築き上げているeスポーツですが、その波は日本にも着実に押し寄せてきています。
日本のeスポーツファン数(試合観戦・動画視聴経験者)は2020年の時点で686万人、巣ごもり需要とそれに伴うオンラインイベントの増加によってその数はさらに増加傾向にあります。 また観て楽しむだけでなく、eスポーツ専門学校や国内プロリーグの開幕など、eスポーツ選手を目指す環境も徐々に整いつつあります。市場の拡大が留まるところを知らないeスポーツ市場が、オンライン化の進むエンターテイメント業界にどのような影響を与えるのか今後も目が離せません。




