競馬における回収率は馬券購入の収支を表す指標です。好きな馬を応援する、日本ダービーや有馬記念など大きな競馬の祭典だけ馬券を購入する、そんなライトな楽しみ方ができるところも競馬の大きな魅力ですが、競馬の楽しみ方を馬券に見出したファンというのは必ず回収率という言葉に辿り着くはずです。この記事の需要は競馬の回収率とは何を指すのかという初心者から、回収率の上げる方法を知りたいと模索している中級者・上級者まで幅広い層にあると思いますので、競馬の回収率計算方法、回収率の平均値、上げるにはどうすればいいかを大手競馬メディアで記者の経験を持つ専門家が解説していきます。
競馬における回収率の計算方法・的中率との違い
競馬における回収率の計算方法を説明する前に、回収率とは何を意味するのか、的中率とは何が違うのかについて詳しく紹介していきます。競馬で回収率と的中率というのは馬券を買う上で重視される2つの数値であり、収支を語る上で欠かせない数字です。あまり意識したことのない競馬ファンの中には回収率と的中率を混合している人もいますが、この2つは全くの別物です。
回収率と的中率の違いについて
競馬における回収率は投資額を100として、どのくらい払い戻しを得ているのかを表す数字です。100%を超えていればプラス、100%を下回っていればマイナスであることが分かります。一方で、的中率というのは購入レース数を100として、的中レースの割合を示す数字です。なので、的中率というのは100%を超えることはなく、高いからといってプラス収支になっているとは限りません。
回収率の計算方法
競馬の回収率は以下のように算出します。※×100をするのは回収率を%表記にするためです
- 回収率=払戻金額÷購入金額×100
それでは競馬の回収率を計算する例を紹介します。ある日、Aさんが12レース全てに賭けて20,000円分の馬券を購入しました。馬券の調子はよく、その日の合計払戻金が30,000円になったとします。20,000円賭けて30,000円が返ってきたのでその日の収支はプラス10,000円。30,000円÷20,000円×100=150という計算式で、この日の回収率が150%であることが分かります。
翌週、Aさんは12レース全てに賭けて前回と同じく20,000円分の馬券を購入しましたが、馬券の調子が悪く、その日の合計払戻金は8,000円でした。20,000円賭けて8,000円が返ってきたのでその日の収支はマイナス12,000円。8,000円÷20,000円×100=40という計算式で、その日の回収率が40%であることが分かります。
的中率の計算方法
競馬の的中率は以下のように算出します。※×100をするのは的中率を%表記にするためです
- 的中率=的中レース数÷購入レース数×100
それでは競馬の的中率を計算する例を見ていきましょう。ある日、Bさんが12レース全てに賭けて8レースで的中しました。その場合は8÷12×100=66.6(切り捨て)という計算式で、この日の的中率は66.6%であることが分かります。
翌週、前回と同じくBさんは12レース全てに賭けましたが2レースしか的中しませんでした。この場合は2÷12×100=16.6(切り捨て)という計算式で、この日の的中率は16.6%であることが分かります。このように、回収率とは違い的中率は最大で100%となります。

競馬は回収率平均75%の高い壁が存在する
競馬ファンの間でも回収率という言葉はかなり浸透していますが、知らないという人は馬券の素人なのかといえばそうではありません。古くから几帳面に計算していたファンも少なからずいましたが、JRA-VANのソフトなどを使って簡単に管理できるようになったのはここ15年~20年程度だと思います。競馬の回収率というのはプラス収支にしたい人や、馬券を投資として考える人にとっては必須のものですが、数字ばかり追っていると競馬のロマンや血統での応援馬券など買うことができません。そのため、回収率の重要性を理解していても管理していない競馬ファンも多いはずです。
下の表は2015年から2020年までの中央競馬人気別複勝回収率です。簡単に説明すると、障害レースを除く中央競馬の全レースで特定の人気馬だけ複勝を買い続けたら回収率はどうなるかを表しています。
1番人気 | 2番人気 | 3番人気 | 4番人気 | 5番人気 | 6番人気 | 7番人気 | |
2015 | 83% | 81% | 78% | 79% | 77% | 76% | 74% |
2016 | 84% | 81% | 80% | 77% | 73% | 77% | 78% |
2017 | 84% | 81% | 80% | 77% | 77% | 80% | 73% |
2018 | 81% | 86% | 82% | 74% | 77% | 76% | 78% |
2019 | 83% | 80% | 81% | 76% | 79% | 77% | 74% |
2020 | 83% | 83% | 79% | 75% | 74% | 79% | 77% |
パリミチュエル方式が採用されている日本の競馬では25%の控除率が発生するので還元率は75%。ブックメーカーの還元率と比較するとだいぶ低いです。特定の買い方を続けていると回収率は75%に落ち着くと言われています。調べてみると、4番人気~7番人気は平均して75%に落ち着き、1番人気~8番人気は80%程度の回収率であることが分かりました。”競馬の回収率を意識した買い方”というのは75%~80%に落ち着くこの回収率をいかにして100%より上に持っていくかを研究して馬券を購入することを指します。多くの競馬ファンが安定したプラス収支を実現するために、回収率と向き合って試行錯誤しているのです。
競馬の単勝回収率に注目するときの注意点
競馬で回収率を意識したことがない人でも、単勝回収率に注目すると馬券の幅が広がるので面白いと思います。先程紹介したような人気だけでなく、血統や騎手、調教師の先生、馬主さんごとに単勝回収率を計算すると予想に活かせるのは紛れもない事実です。昔は競馬新聞の制作側も大変でデータ予想を担当する記者は紙で数字を管理していました。今はテレビで活躍されている元「ホースニュース・馬」の競馬評論家、井崎脩五郎先生も膨大な量のデータを紙で蓄積していたとの話を聞いたことがあります。しかし、今ではJRA-VANで様々なデータを見ることができますし、TARGETなどの競馬ソフトを駆使すれば見れない情報はありません。私が競馬記者をやっていたときもデータ班はTARGETを使って情報収集をして、そこにトラックマンからの現場情報を組み合わせて皆さんに発信をしていました。
以前、競馬ビギナーの友人がこんなことを言っていました。「ルメール騎手だけ買ってたら儲かるんじゃないか」「もう川田騎手だけ買っておけばマイナスにならない気がする」そんな発想を皆さんもしたことがあると思います。これはプロでも意識するポイントですし、全く悪いことではありません。ただ、騎手の結果と単勝回収率は意外と比例しないことを覚えておいてください。
2020年中央競馬騎手リーディング
- C.ルメール/204勝
- 川田将雅/167勝
- 福永祐一/134勝
- 松山弘平/127勝
- 武豊/115勝
- 横山武史/94勝
- 吉田隼人/91勝
- 三浦皇成/78勝
- 岩田望来/76勝
- 田辺裕信/74勝
2020年中央競馬騎手別単勝回収率ランキング
※100鞍以上騎乗した平地のJRA所属騎手のみ
- 岡田祥嗣/単勝回収率215%(3勝)
- 武藤雅/単勝回収率183%(36勝)
- 柴山雄一/単勝回収率139%(11勝)
- 木幡巧也/単勝回収率138%(28勝)
- 加藤祥太/単勝回収率138%(10勝)
- 嘉藤貴行/単勝回収率131%(3勝)
- 藤井勘一郎/単勝回収率128%(16勝)
- 太宰啓介/単勝回収率128%(15勝)
- 横山武史/単勝回収率123%(94勝)
- 森裕太朗/単勝回収率119%(9勝)
上記のように騎手リーディングの上位が単勝回収率ランキングの上位に入るわけではありません。理由は簡単で、リーディング上位の騎手には良い馬が集まり、その結果としてオッズが下がるからです。オッズが下がれば必然的に配当も下がるため着外分を回収するのが難しくなります。横山武史騎手は2020年にブレイクした騎手ですので、そこまで人気馬が集まっていない中で勝ち星を積み重ねたのがランクインの大きな理由かと思います。エフフォーリアをはじめとして、2021年は人気馬の騎乗依頼が多く来ている印象なので、単勝回収率も少し下がるかもしれませんね。イメージだけで言えばルメール騎手や川田騎手を買い続けていればプラスになるのではと考えるファンも多いかと思いますが、騎手の実力と回収率は全くの別物です。
競馬の回収率を上げるための買い方
競馬で回収率100%以上を安定して出している馬券プロは確かにいますが、彼らの真似をすることは基本的に不可能と考えていいと思います。少なくとも私にはできません。馬券プロと言われる人たちは「①統計学をベースとしたプログラミング能力に長けている」「②軍資金が人並み以上にある」このいずれかに該当します。前者の方たちは完全に投資として競馬を行っており、ある一定の条件下で自動的に購入されるようにプログラムを組んでいます。後者に関してはレース選定に力を入れており、回収率を意識しながら多額を投資することで当たれば今までの損失分をカバーできる買い方をしています。こちらは特別な能力は必要ありませんが、そこまで戦える資金力が不可欠です。私を含めた大多数の人は難しいと思いますので、ここでは一般の競馬ファンが回収率を上げるためにどんな買い方をすればいいのかアドバイスをしてしきたいと思います。
レース選定は非常に大事
プログラミング能力に長けていたり、軍資金が余るほどある裕福な方を除けば、結局自分で努力するしかないのです。その際、絶対に必要となるのがレースの選定力です。3連単で買うのか単勝で買うのか、点数を絞るのか広げるのか、人気馬を軸にするのか避けるのか。回収率が100%を超えるのであれば買い方は人それぞれ自由ですが、結局は自分の買い方に合ったレースを選べるかどうかです。このレースが荒れるのか否か、なぜその馬を選んだのか、何レース的中すれば回収率が100%を超える計算なのか。そういった根拠を持って予想してみるとだいぶ違うはずです。面倒だとは思いますが大切なことなのです。
人気に左右されない
競馬において人気とはオッズ順に出走馬を並べただけのものです。そして、そのオッズというのは競馬ファンが作り出した総意であって能力順とは限りません。現在では全レースの動画が観られる環境にあるわけですし、購入するレースの出走馬が前走でどんなレースをしたかは把握しましょう。競馬新聞などメディアの情報だけを参考に馬券を購入している人たちの意見がオッズには反映されるので、「自分だけが気付く買い目の理由」というのを探して馬券に絡めてみると、回収率を上げるための買い方に繋がると思います。
トリガミには注意する
競馬は外れるとテンションが下がりますし、モチベーションを保つのが難しくなってきます。気持ちは痛いほど分かりますが、当たった外れたに一喜一憂しているうちは回収率は上がりません。回収率を上げる場合は的中率を意識する必要はなく、10レース購入して1レースしか的中しなかったとしても、10レースで投資した金額以上のオッズで的中させれば回収率100%以上になることを忘れてはいけないのです。期待値以下のオッズに手を広げたとしても点数ばかりが増えてしまい、逆に外れたときの損失も膨れ上がります。競馬の回収率を上げるためにはトリガミに注意をして、長期的な目で馬券を購入しましょう。

競馬の回収率は大切だけど楽しむことを忘れずに|まとめ
この記事では競馬の回収率と的中率の違い、計算方法、単勝回収率の注意点、上げるにはどうすればいいかを解説してきました。確かに競馬で勝つためには回収率というのは絶対に重視しなければいけない要素になりますが、競馬で回収率重視の買い方をするということは同時に多くのものを犠牲にするということです。思い出の血統を持つ馬が出走しても買えない、好きな騎手が乗っていても買えない、レース選定に時間がとられて他のプライベートが疎かになる。競馬で回収率を重視した買い方をするというのはそういうことです。私も記者時代に色んな勉強をして安定した回収率に落ち着いた時期もありました。確かにPAT口座の残高は増えていき、時にはWINSで手にする札束に愉悦感を覚えましたが、その時期は競馬を楽しめていなかったように思えます。なんだかんだ言ってシンボリルドルフ、オグリキャップ、オルフェーヴルといった馬たちが与えてくれた感動・ロマンが私にとっての”競馬の魅力”なのです。こんな素敵な世界を楽しめないなんて勿体ない。皆さんも回収率を上げることに向き合うのはいいですが、楽しむことを忘れないでくださいね。
最後にもうひとつだけ注意してもらいたいことがあります。回収率を上げたくても上手く行かない状況が続くと、人は誰かに頼りたくなってしまうものです。そんな中で、予想会社の謳い文句や買い目販売のビジネスに手を出してしまう人が多いように感じます。全部が全部とは言い切れませんが、99%の予想販売ビジネスは回収率100%を年間ベースで超えるのは困難でしょう。何故こうやって言い切れるのかというと、それだけのノウハウを持っている人は別に予想を販売するメリットがないからです。仮に販売したとしてもオッズを下げることだけは避けたいはずなので、広告を出している・サイトを持っている・SNSで募集しているなどはあり得ません。大切な資金を無駄使いしないように気をつけてください。