現在大流行しているeスポーツは、これまでの「ゲーム=遊び」というイメージを払拭し、スポーツの新しい楽しみ方を世界中の人たちに提供してくれました。 日本では徐々に認知され始めたといったところですが、海外ではすでにeスポーツ選手はサッカーや野球など、従来の人気スポーツと同様に子どもたちに憧れの職業となっています。
そんなeスポーツを日々楽しむ中で、「Tier」という言葉を見かけたことはないでしょうか? DCG(デジタルカードゲーム)やMOBA(マルチプレイヤー・オンライン・バトルアリーナ)、格闘ゲームなど多くのゲームジャンルでTierは使用されています。様々なeスポーツタイトルの紹介記事や攻略雑誌でよく見かけるTierですが、この言葉にはどのような意味があるのでしょうか? この記事では、eスポーツの世界での「Tier」の意味や使い方についてわかりやすく解説します。
そもそも「Tier」とはどのような意味があるのか?
まずは、Tierの本来の意味について解説します。 Tierは日本語でティアと読み、英語で「階層」を示す言葉です。 語尾に数字を付けて「Tier1」・「Tier2」・「Tier3」といった使われ方をします。
Tierには、「階層」の他にも「段々に並べる」や「積み重ねる」といった意味があり、もともとはIT用語として使用されていました。 ちなみに通信業界では、インターネットのプロバイダーでネットワーク構造の最上位に位置する最大手プロバイダーをTier1プロバイダー、そこから経路情報を購入して顧客に提供するプロバイダーをTier2プロバイダー呼びます。 日本だと、NTTコミュニケーションズなどがTier1プロバイダーにあたります。
eスポーツにおけるTierの意味
先程、Tierのもともとの意味と表記方法について紹介しましたが、eスポーツではTierはそのゲーム内の「強さのランキング」を表し、同じように一番上の階層をTier1、続いてTier2といった使い方をします。
使い方の例
では、実際にeスポーツでTierを使うのはどのような場面なのでしょうか? ここでは、例としてDCG(デジタルカードゲーム)でのTier1・Tier2・Tier3を紹介します。DCGについて詳しくない方に向けて簡単に解説すると、「スマホやPCなどを用いてオンライン上でプレイすることのできる対戦型カード」がDCGです。 遊戯王やポケモンカードなど、小さな頃に遊んだカードゲームをオンラインで楽しめるようになったものと考えてもらえるとわかりやすいでしょう。
Tier1
DCGではデッキの強さをTierで表現し、Tier1は現環境でトップのデッキを指します。Tier1に該当するデッキは環境の中心となっており高い完成度とパワーを誇ります。 しかし、使用される頻度が多い分デッキの構成などが割れやすく、専用の対策が施されることもあります。
Tier2
Tier2はTier1のデッキに十分対抗できるパワーを持っているが、環境上位のデッキとの相性差や安定性にかけるなどの弱点があるデッキです。そのため環境の変化次第ではTier1に昇格する可能性も十二分にあります。 しかし逆もまたしかりで、環境次第では簡単に下のTierへ降格してしまいます。
Tier3
俗に中堅デッキと呼ばれるのがTier3です。Tier1・Tier2のデッキと比べると見劣りしてしまいますが、一定数の使用者は存在するデッキです。また、デッキパワーは上位Tierに劣らないものの、同じクラスで別のデッキが上位Tierに位置している場合もTier3となることがあります。
Tier4
まだまだ発展途上の段階にあるデッキがTier4に入ります。 構成が固まりきっていないことが多いため、上位Tierのデッキと比べてデッキパワーはかなり劣ります。しかし、新カードの追加や能力の調整などで上位Tierに入り込める可能性を秘めているので、Tier3と同じく一定の勢力が存在します。
eスポーツ以外での使い方
eスポーツでよく見かけるTierですが、ゲーム以外にも自動車業界やラグビーで使われることがあります。自動車業界では、下請け構造のうち元請けに近い会社のことをTier1と呼びます。 自動車販売で有名なトヨタで例を挙げると、下請けの自動車部品メーカーの中でトヨタに直接部品を納入するポジションにいるデンソーがTier1となり、デンソーに部品を納入する会社がTier2、Tier2に納入する会社がTier3となります。
ラグビー界では、各国ごとに実力・伝統・格式などを総合的に評価してTier1からTier3までの区分に分けられています。 国際試合では基本的に同じTier同士でしか対戦はできず、協会の投票における票数や利益分配などの格差が与えられています。
伝統・格式とは言いましたが実際は実力での差が大きく反映されており、わかりやすく例えるとワールドカップに出場して上位を狙えるのがTier1、ワールドカップに出場はできるのがTier2、ワールドカップに出ることすらままならないのがTier3となっています。ラグビーはTierをまたいだ対戦ではワンサイドゲームが当たり前になってしまうほど実力差が試合の勝敗に直結しやすいスポーツであるため、このような明確な区分がなされています。
Tierの注意点
eスポーツではTier1からTier2、Tier3と順番に強さのランキングを示すと解説しました。 タイトルによって内容は変わりますが、Tier1は誰が使っても強くどのような相手にも互角以上で戦うことができるといった意味合いを持ちます。しかし注意してほしいのは、Tier1を使えば必ず勝てるわけではないということです。 Tierはあくまで指標であり、プレイヤーの力量次第ではTier2やTier3の使用者に負けることも十分にありえます。
またTierでは、「同じTier内での優劣が存在しない」ということが非常に重要です。 eスポーツの世界では、Tier1の中でも飛び抜けて強いものが存在した場合、ゲームバランスを整えるために弱体化(ナーフ)されることがありますので覚えておきましょう。
日本のeスポーツTierはどうなっている?
デッキの強さや武器の強さなど、様々な場面で使われるTierですが、eスポーツタイトル全体にもTierは存在します。 ここでは、国内のライブ配信に特化した調査会社である配信技術研究所(配信技研)が発表した、日本国内における2020年のeスポーツTierを紹介します。
なお選定基準は以下の通りとなっています。
- 期間:2020年1月1日〜12月31日
- 対象:日本国内で開催されたeスポーツの競技大会
- 単位:ライブ配信の視聴時間合計(分)
- Tierの基準:Tier1=総視聴時間1億分以上・Tier2=3000万分以上・Tier3=1000万分以上
eスポーツTier1
- リーグ・オブ・レジェンド(LoL・League of Legends)
- シャドウバース(Shadowverse)
- ヴァロラント(VALORANT)
- 大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL
- IdentityV 第五人格
- PUBG(PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS)
(参考:Esports Tiers in Japan 2020 配信技術研究所)
Tier1では、シャドウバース・大乱闘スマッシュブラザーズと日本発のタイトルが2つランクインしているのが特徴です。 特にシャドウバースは、2018年に国内のプロリーグ「RAGE Shadowverse Pro League」が設立されるなど大いに盛り上がっており、世界大会である「Shadowverse World Grand Prix」は国内大会で唯一優勝賞金が1億円を超える大規模なeスポーツの祭典となっています。
また、人気のFPSジャンルでは、2020年のリリース直後からeスポーツを意識した高い競技性で爆発的な人気を誇っているヴァロラントが勢いそのままにTier1に位置しています。 このタイトルは一般発売前に実施されたクローズドβテストでTwitchにおける同時視聴者数が170万人を突破するなど、世界的に見ても現在最も勢いのあるFPSタイトルといえます。
eスポーツTier2
- レインボーシックスシージ(Tom Clancy’s Rainbow Six Siege)
- エーペックスレジェンズ(Apex Legends)
- ストリートファイターV
- PUBG MOBILE
- 荒野行動
Tier2は日本のバトロワ人気が反映された結果となっています。 エーペックスレジェンズは、2019年に配信が開始されるとまたたく間に人気を集めたバトルロイヤルシューティングゲームです。 世界だけなく日本でも大きな盛り上がりを見せており、全世界のアクティブユーザーのうち5分の1以上を日本人が占めています。
PUPG MOBILEと荒野行動はどちらもスマホで本格的なバトルロイヤルが楽しめるタイトルで、こちらも日本のゲーム事情をよく表しています。 eスポーツの人気タイトルにはPCのものが多いですが、日本では海外と比べてPCでゲームをする文化があまりありません。 そのため、日本ではスマホで気軽にeスポーツが楽しめるモバイルタイトルの人気が高まってきています。
eスポーツTier3
- スプラトゥーン2
- グランブルーファンタジー ヴァーサス
- プロ野球スピリッツA
- モンスターストライク スタジアム
- 鉄拳7
Tier3ではプロ野球スピリッツA・モンスターストライク スタジアム・グランブルーファンタジー ヴァーサスなど、日本独自のタイトルが目立ちます。こういったタイトルは日本やその近辺の限定的な地域では盛り上がりを見せていますが、LoLやCS:GOといった世界規模タイトルの盛り上がりには遠く及びません。
日本のeスポーツの普及が世界と比べて遅れているのには、このような日本eスポーツタイトルのガラパゴス化(世界基準のタイトルとの乖離)が要因の1つとして挙げられます。 さらに言えば、2019年にはランクインしていたCall of Duty・フォートナイト・ハースストーンといった世界では人気のタイトルに成り代わった形となっていることから、日本eスポーツのガラパゴス化は徐々に進んでいるといえます。
もちろん上記のタイトルはどれも深い戦略性と高い競技性を持っており、eスポーツにふさわしい作品ですが、日本のeスポーツ市場をさらに広げるためにはグローバルな人気を持つタイトルをもっと国内で盛り上げていく必要があるでしょう。
eスポーツTierの注意点
今回紹介したeスポーツタイトルのTier表は、ゲームで使用されるTierのように強さや人気をランキングにしたものではなく、視聴時間を元にした「国内での盛り上がり」を示す指標であり、日本のeスポーツ情勢を表す一部分でしかありません。 当然Tier1のタイトルが最も面白いということではありませんし、Tier2やTier3のタイトルの人気がないということでもないので注意してください。
また、今回のTier表に入っていないからといって、そのタイトルが盛り上がっていないというわけではないことにも注意しましょう。 ゲームを楽しく感じるポイントは人それぞれですので、あくまで日本eスポーツの情勢を知るための資料程度に考えておいてください。
まとめ
この記事では、eスポーツでよく使われる「Tier」という言葉の意味や使い方について解説しました。ゲームの世界では強さのランキングを表すTierですが、使えば必ず勝てるというものではありません。 強いとされている分多くのプレイヤーにとって攻略対象になるので、構成や戦い方などの分析がされ対策が立てられやすくなります。 また、能力の弱体化や環境の変化によって突然上位Tierから降格することも珍しくはありません。
eスポーツで勝つためには、上位Tierを使うだけでなく、プレイヤーのスキルや環境の変化、事前対策など様々な要素を考慮しなければならないことを覚えておきましょう。




